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イカの石

まったくもって仕事が忙しくて、記事を更新する暇がない。
実際には更新する暇がないわけではなくて、書くための元ネタを集めたり、それについて深い考察や鋭い洞察をしたりする余裕がないわけである。さらにそれを美しい文章にして、手際よくアップロードしている時間がないのだ。さて、過去の記事のどこを探せばそのようなものがあったというのか?

a0035543_19582767.jpgそういう状況の中でも、面白そうな本は探して読むよう心がけている。
本日ご紹介するのは、超古代文明は恐竜と共にあり、そして恐竜と共に滅びた、という『恐竜と共に滅びた文明』(浅川嘉富著、徳間書店)である。
前作『謎多き惑星地球』(上下巻、徳間書店)の続編とでもいうべき内容、と書きたいところだけれど、前作を読んでないので(立ち読みしただけ)、そうなのかどうか知らない。
著者はウェブ・サイトも開設している。 “世界の不思議”


本に巻かれた帯によると、フジテレビ「奇跡体験 アンビリーバボー」でOAされたらしいのだが、ぼくはTVをまったく見ないので、それがどういった番組でどういう取り上げ方をされたのか分からない。なんとなく想像はつくけどね。

ぱらぱらと読んでみて荒唐無稽な本であろうと思ったので、買うのはずいぶん迷ったのだけれど、写真と挿絵に惹かれて買うことにした。

どうなってるんだ
科学!!
(6500万年前絶滅?)
恐竜と
(500万年前発生?)
人類が共存!
家畜化までしていた
衝撃の事実!!
(まったくあてにならない!)
地層年代測定法と
(こじつけだらけ!)
進化論は、
まやかしだった!!
 ──帯裏表紙側より

この力の入った帯を読めば、ぼくが拙い要約の腕を披露する必要はなさそうだ。この帯の文句と、徳間書店の発行であることが購入を迷った理由の一番大きなものでもある。確かに大ざっぱにはこういう内容ではあるけれど、これではただのトンデモ本としか思われないだろうから、一応ぼくなりに紹介する。

ペルーのイカという町。首都リマから車で4〜5時間の距離にあり、超古代文明といえばつきもののナスカの地上絵のご近所のようだ。まだそれほど観光地化されていない、インディオの息吹の感じられる町である。
この町を建設したのは、16世紀にインカを征服したスペイン人、ドン・ヘロニモ・カブレラ。その直系の子孫であるハビエル・カブレラ・ダルケア博士は、イカ大学で教鞭を執る傍ら、医師としても活躍していた。
1960年代のはじめ、誕生日のプレゼントとしてカブレラ博士は友人から不思議な絵の刻まれた石を贈られた。その石に描かれた生物が神話に出てくる動物に似ていると気づいたとき、それまで考古学にまったく興味のなかったカブレラ博士の人生が大きく変わることになった。これが「イカの石」または「カブレラ・ストーン」である。

著者はイカの町にカブレラ博士とその私設の博物館を訪ねる。残念なことに博士はすでに他界していたが、かつて博士の秘書を務めていた女性を捜し当て、博物館を見学できることができた。
カブレラ博士が収集し、展示された石の数は1万個以上。その数も驚きであるが、それ以上の驚異は、やはりその石にあった。

石に刻まれていたのは、絶滅した動物たちの姿や、望遠鏡らしきものを使って天体観測をする人物の姿、脳や心臓の全摘出といった高度な外科手術を施している人間の絵などであった。

この絵がなんとなくいいのである。ヘタウマ(死語?)な感じといえば簡単だけれど、一種の執拗さを感じるほど細かく、Illustratorで描いたかのように正確に均一な幅と深さの線で石の全面に刻み込まれている。とても市井の芸術家が気の趣くままに彫ってみた、というような雰囲気のものではない。上の表紙の絵をクリックすれば少し大きな画像で見られますよ。

さて、ここでもう一度帯の文句を読めば、おおよそ内容の見当はつくと思う。
(誤解する方はそんなにはいないと思いますけど、「家畜化」されていたのは人間でなくて恐竜ですから、念のため。)

要するに恐竜の絶滅と人類の誕生について、古代生物学の通説は間違っとる、ということである。著者は放射性元素年代測定法は不確かなものであり、地球の年齢は46億年でなく200万年程度である、と主張する。
さらに、地球の重力は今より20%程度は小さかったはずで、そうでなければ巨大な恐竜は走ることはおろか、立つことすらかなわなかったはずだという。
確かに、恐竜には大きすぎる体を持つものが多い。
a0035543_19585945.jpg恐竜といえばなんと言ってもティラノサウルス・レックスである(文句は言わせない)。足跡の研究から、それは時速30km以上で移動していたとされている。全力疾走では時速72kmにもなると主張する恐竜学者もいる。
ティラノサウルス・レックスの体重を7t、移動速度を時速72kmと仮定すると、それぞれの脚には全体重の43%、3tの筋肉がないと体を支えられないという。両脚で6tということは、体の残りの部分は1tしかないことになる。適当に描いてみたが、こんなものか?(左図)

ところが、現代科学に真っ向から対立する本の常として、途中からはなんだかあっちの世界へ行ってしまったかのような記述がある。前作『謎多き惑星地球』で描いた超古代文明について著者がインスピレーションを受けたのは、ある臨死体験者の目撃した、超古代文明滅亡の瞬間であったそうだ。その体験談がこの本にも登場する。「(著者が臨死体験者の)体験を信頼する根拠は、彼の人柄と臨死体験後の人生の歩み方である」と書かれているのだけれど、いや、人柄は事実とは関係がないんじゃないか。これに割かれた7ページ弱のせいで、本書の説得力ははかりしれないダメージを受けている。
その辺りさえなんとか乗り切れば、とても面白い本であるのは確かだ。

この本の主張は、進化論の否定がその根本にある。地球の年齢が200万年程度だとすれば、当然のんびりと進化なんてしている暇はない。すべての生物は同時に作られたとする、創造論こそが正しいと著者は主張する。ぼくはスティーヴン・ジェイ・グールドの愛読者であり、進化論は信じるに足るべき科学であると思っている。著者の主張する創造論を支持する気にはなれない。
しかし、恐竜(やそのほかの古代巨大生物)の存在に対する疑問について、著者が主張する重力の変化は魅力的な仮説である。『謎多き惑星地球』も読むかどうか迷うところだ。
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by clocken | 2004-10-10 20:10
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思考の空転するままに書くことができたら。


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