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“法廷侮辱罪"というのがなんなのか気になった

 最初に新聞記事を読んだときには、見出しを読んでさらっと流し読みしただけだったので、さほどの関心を持たなかった。“法廷侮辱罪”という言葉だけがちょっと気になったので、頭の片隅にメモしていた。しかし今日ポータルにしているExciteでExcite ニュース「米紙記者を4カ月収監 連邦地裁、証言拒否で」を読み、これが大きな事件であることを知って愕然とした。

 ことの顛末はMSN-Mainichi INTERACTIVE「米情報源秘匿:法廷侮辱罪相次ぐ 報道の自由、多難な局面」やgoo ニュース「記者の情報源秘匿認めず、米メディア『失望』 米最高裁決定(産経新聞)」などに詳しい。記事を元に事件の経緯をひどく簡単に要約する。

 03年7月、一部メディアが、ジョゼフ・ウィルソン元駐ガボン米大使の妻パレリー・プレイムさんを名指しでCIA工作員であると報じた。これはホワイトハウス高官のリーク(ウィルソン氏への報復を目的)ではないかと疑われた。
 米司法省は漏洩が「情報機関関係者の身元開示を禁じる連邦法違反」に該当すると判断し、独立検察官を任命して捜査に当たらせた。
 さて、これを取材した記者2名が連邦大陪審(容疑者を起訴するかどうかを決定する陪審)に召還され、取材過程で接触した政府職員の名を明かすよう求められたが、証言を拒否した。これが法廷侮辱罪に問われ、連邦地裁で有罪判決、高裁でも有罪となった。2名は上告したが、先月27日連邦最高裁は棄却した。

 法廷侮辱罪というのは、判事の訴訟指揮権を強化するための制度である。つまり刑事訴訟手続きにおいて裁判の進行を深刻に妨げることを罪と規定している(民事の場合はまた別のものである。今回は関係がないので割愛)。
 どうも「侮辱罪」というのは日本語の訳語として問題だと思うけれど、まあそれはおいといて、これじゃ事実上気骨あるジャーナリストはみんな投獄されてしまうではないか。そういうわけでアメリカでは26州で「シールド・ロウ(「取材情報源秘匿法」などと訳される)」といわれるジャーナリストの証言拒絶権を保護する法律が存在する。
 ところが話はそう簡単ではない。
 シールド法が存在する州でも、多くのジャーナリストがニュース・ソース秘匿を法廷侮辱罪と判定され、投獄されてきた。なぜなら「通常、記者の〈保護〉は、公平な裁判を被告が受ける権利を保障した米国憲法修正第6条の下位にある」からである(H・ユージン・グッドウィン『ジャーナリズムの倫理を求めて』(第2版、1987年)を、『権田萬治ホームページ Mystery&Media』の中の記事、メディア時評(2)「記者の証言拒絶権をめぐって」から孫引き)。また、多くの場合、72年連邦最高裁判決での「大陪審での記者への証言命令は、憲法で保障された報道の自由の制限にあたらない」という決定が根拠になっているようだ。

 アメリカとは恐ろしい国である。

 それでも、
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、米主要メディアの記者が取材源を明かさなかったことを理由に収監されるのは、同紙記者が1978年に40日間収監されて以来という。(→NIKKEI NET「取材源秘匿の米紙女性記者収監・米連邦地裁」)

 というから、なにがなんでも監獄へ放り込む恐ろしい判事ばかりというわけではないようではあるけれど。

 しかし、ぼくが今回の一連の記事を読んでもっと恐ろしくなったのは、次のような記述である。
 米中央情報局(CIA)工作員名漏えい疑惑を捜査しているフィッツジェラルド特別検察官は5日、取材源の秘匿を理由に大陪審での証言を拒否しているニューヨーク・タイムズ紙の記者らの身柄について、自宅拘禁ではなく、連邦刑務所に収監すべきだとの書面をワシントンの連邦地裁に提出した。
 地裁は6日、法廷侮辱罪での有罪が確定している同紙のジュディス・ミラー、タイム誌のマシュー・クーパー両記者に対し、収監期間、場所などを言い渡す予定になっており、特別検察官は判決を前に、両記者への「厳罰」を求めた形だ。(→Excite ニュース「連邦刑務所への収監を 特別検察官、厳罰求める」)

 これは、特別検察官による“報復”であり、“見せしめ”である。そしてその結果、
 ミラー記者については「収監によって証言する気になる可能性がある」として収監を命じた。収監期限は、情報漏えい事件を調べている大陪審が終了する十月までとされた。(→東京新聞「取材源秘匿 米記者を収監 連邦地裁」)

 ということになったのである。司法による“脅迫"である。

 再び、アメリカとは恐ろしい国である。

 自社ジャーナリストを全面支持する姿勢を明らかにした『ニューヨーク・タイムズ』誌に較べ、上告棄却を批判しつつも「最高裁の判断に従う」と表明した『タイム』誌の腰砕けぶりも批判したかったけれど、書ききれないのでここでやめておく。

参考にしたサイト(順不同):
・Excite ニュース「米紙記者を4カ月収監 連邦地裁、証言拒否で
・NIKKEI NET「情報源秘匿のNYタイムズ記者を収監
・NIKKEI NET「取材源秘匿の米紙女性記者収監・米連邦地裁
・Excite ニュース「連邦刑務所への収監を 特別検察官、厳罰求める
・MSN-Mainichi INTERACTIVE「米情報源秘匿:法廷侮辱罪相次ぐ 報道の自由、多難な局面
・「メディアが脅かす報道の自由」(記事元: 『melma!blog [新聞批評]』)
・goo ニュース「記者の情報源秘匿認めず、米メディア「失望」 米最高裁決定(産経新聞)
・「メディア時評(2)「記者の証言拒絶権をめぐって」(記事元: 『権田萬治ホームページ Mystery&Media』)
・「陪審復活・なんでも Q & A」(記事元: 『陪審制度を復活する会のホームページ』)
・「裁判員制度と取材・報道の自由に関する意見書」(記事元: 『JCLU/ ホームページ』)※JCLUは社団法人自由人権協会のことだそうです
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by clocken | 2005-07-07 20:20
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思考の空転するままに書くことができたら。


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